仕事をし始めたころに、人の悪口をよく言う先輩がいました。
10歳ほど年長のAさんです。
その場にいない別の同僚や上司の悪口を言いまくるのです。
そしがやがまだ20歳代のころでした。
そのAさんの会話の中身といったら、7割方が他人の悪口で、残りが仕事を含めたそのほかの話題といったところでしょうか。
そしがやは、Aさんといっしょになると黙って、「うん、うん」と聞き流していました。
人の悪口をしゃべるのは、悪いことだと教えられてきたからです。
ですが、自分がいないときには、ほかの同僚にそしがやの悪口を言っていることは、予想できました。
そんなAさん対しては、ほかの同僚もそしがやと同じように感じていたようで、だんだん警戒されるようになってきました。
また、Aさんは、仕事の方は、そんなにできる方ではなかったのですが、仕事上の失敗があると、自分は、責任がないと誰かに責任を擦り付けるので、同じ担当の仕事をするのを嫌がる人も出てくるようになりました。
そんなわけで次第にAさんは、孤立してきました。
自業自得と言ったところでしょう。
こういうのって、どんな職場にもありそうです。
職場だけではなく、学校とかでも人の集まるところではありがちなことでしょう。
こういう人は、嫌われ者になりがちですが、実をいうとそしがやは、ある意味では、うらやましかったのです。
最初に述べたように、人の悪口を言っちゃいけないと教えられてきたせいか、他人にどんな欠点や許せないことがあっても、悪口が言えなかったのです。
ですが、そういうことを続けているとストレスが溜まることは確かです。
人の悪口が口に出せたら、どれだけ気持ちがすっきりするか、ストレス発散になるかと思ったものです。
そんな中、現れたAさんは、世間で言われている、悪口を言っちゃいけないという道徳律を無視するかのように悪口を、ある意味では、気持ちよくしゃべっていたのです。
そしがやには、ちょっとうらやましかった部分もありました。
そんなわけでそしがやも次第に他人の欠点を指摘して、言えるようになってきました。
それでどうにか、精神的には、少しはラクになったものです。
そのAさんは、嫌われたまま、職場で誰にも相手にされなくなり、逆にAさんがいないときには、職場の皆がAさんの悪口を言うという状況になり、耐えきれずか、別の職場へ異動していきました。
その後、Aさんには、会うことはありませんでした。
一般的には、Aさんは、嫌なやつでしょうが、そしがやにとっては、ストレスの多い公務員生活を続けることができるコツを教えてくれた恩人ともいえるかもしれませんね。