ネット上でいろいろな投資に関する記事を読んでいますが、中には、かなり見当はずれの記事もあります。
それがメディアによく登場する経済評論家のものだと本当にショックを受けます。
今回は、そんな記事を紹介します。
「貯蓄から投資へ」と盛んにいわれている。それはすべての人に当てはまることなのだろうか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「国はiDeCoやNISAへの投資を勧めているが、やめたほうがいい人もたくさんいる」という――。
この記事の出だしは、タイトルとは異なって、極めて常識的なものです。
「国はiDeCoやNISAへの投資を勧めているが、やめたほうがいい人もたくさんいる」というのは、もっともなことです。
ですが、実際に記事の中身を読んでみると投資を全否定しているような文面が並びます。
この記事では、iDeCoとNISAについて触れていますが、iDeCoは、そしがやは、利用していないので、今回は、NISAだけについて述べたいと思います。
NISAは投資ですから、100万円の株が150万円になることもあるでしょう。この場合、通常の証券口座なら値上がり益の50万円に対して約20%の10万円が税金として引かれます。けれど、NISAの口座なら非課税ですから、50万円が丸々手取りになり、税金の10万円ぶんが儲かるということになります。これがNISAのメリットです。
この説明は、もっともな説明です。問題は、次の個所です。
ところがNISAは、5年なり10年なりで、損をしていても必ず引き出して損を確定しなければなりません。
たとえば、100万円の株が50万円になってしまった場合、5年後に50万円だったら、その株は、50万円で買われたと言うことになります。
ですから、そのまま「塩漬け」して、やっと買い値の100万円になったから売ろうとすると、50万円の利益となり、なんと約10万円の税金を支払わなくてはなりません。
この説明は、NISAで100万円が50万円になってしまったものを課税口座に移した場合を想定しています。
その場合は、当然、課税口座で利益を得た以上20%の税金を払う必要があります。
NISAそのものには、何の責任もありません。
この記事では、課税口座に移したということの説明が省かれていますが、何か意図的なものを感じます。
金融庁のウェブサイトにもNISAの課税については、いくつかの事例が説明されていますが、この著者は、見ていないのでしょうか。
つまり、NISAは買った投資商品が値上がりすれば税金ぶんが儲かるが、値下がりすれば増税になってしまう商品なのだと言うことです。実質的な利益はゼロなのに、税金だけを引かれるという理不尽なこともありうるのです。
最後には、このように説明していますが、値下がりの事例については、課税口座の場合という事実が隠されています。
これでは、この記事を読んだ読者は、NISA口座は、値下がりの場合は、課税されてしまうと勘違いしそうです。
もし著者がそのように本当に認識しているのなら、勉強不足だし、経済評論家失格でしょう。
同様につみたてNISAについても説明しています。
いろいろと制度について説明した上で以下のように結論付けています。
銀行の積立定期で月5万円ずつコツコツ積み立てしていけば、5年後には確実に300万円を準備できます。けれど、その5万円を投資に回したら、必ず300万円になるという保証はありません。
運用が上手くいけばよいですが、株価が暴落して買っていた投資信託も値下がりしてしまったり、円高で目減りしてしまったら、大学には一人しか行けないということにもなりかねません。
投資によって損をする場合があるのは、当然です。
ですが、この記事では、その運用がうまく行かなかった責任を「つみたてNISA」のせいにしています。
投資する以上、運用が必ずしもうまく行かない場合があるのを承知の上で投資家は、投資をしています。
NISAや「つみたてNISA」は、金利がほとんどゼロの中、国民の資産形成に利便を図るために設けられた制度です。
投資がしたくない人は、投資をしなければいいだけの話です。
ただそしがやは、中長期的には、投資は、必ず見合ったものがあると考えているし、過去の投資は、そのような結果になっています。
この著者の記事は、iDeCoにしてもNISAにしても投資は、危険だと言うばかりです。
それなら投資はしないで、金利がほとんどゼロの貯蓄をすべきということでしょうか。
ですが、それではいつまでも資産形成はできないでしょう。
メディアによく登場する「経済評論家」がこの程度の認識というのは、本当に残念です。