村上世彰というと2006年6月、ニッポン放送株をめぐるインサイダー取引を行った容疑で逮捕されたことを思い出す人も多いでしょう。
ぎょろ目で「お金儲けって、悪いことですか」とテレビで発言する姿が印象に残っています。
結局は、執行猶予つき有罪判決を受けて、表舞台から姿を消しましたが、最近また株式取引の世界に戻ってきたようで、メディアでその名をまた耳にしました。
そしがやも含めた多くの人にとっての彼のイメージというのは、巨額の資金を使って、会社を乗っ取ろうという、かなり胡散臭いことをした人というものでしょう。
そんな彼が書いた本を読みました。
彼は、灘高―東大法―通産省という道を歩んでいます。
元官僚だったというのは、知りませんでした。
ある意味では、エリートだったわけです。
そんな彼が、投資家になります。
それは、日本の経営者が株式会社を自分のものだという意識が強く、そのため経営が独善的なものになり、株主の利益を損なっているという面があるので、株主として、健全な経営のために発言をするためでした。
つまりコーポレート・ガバナンスを確保するということです。
この本では、具体的な例が紹介されています。
世間的には、ニッポン放送とフジテレビをめぐる騒動しか印象にないのですが、彼のコーポレートガバナンスを目指す活動は、ほかにもあったわけです。
ずっと読んでいくと彼の立場がよくわかりました。
彼が16年前に社会に反発を受けたのは、「株式会社は経営者のものか、株主のものか」という哲学の問題に行き当たります。
理屈で言えば、株式会社は、株主のものだというのは、正論でしょうが、当時の日本には、経営者のものだという意識が強かったからでしょう。
いまでもそうかもしれません。
そしがやもこの本を読んできて、彼の考え方が分かりましたが、日本の場合は、株式会社というものは、多数の従業員を抱えているので、単純に株主の利益だけを目指すだけで、いいのかとも思います。
ただ、彼のいうようにコーポレート・ガバナンスが今までの日本の株式会社に足らなかったことも理解できます。
グローバル化が進む中で、これまでの日本だけの考え方では、やっていけないのも事実でしょう。
そしがやは、現在個人投資家として、いくつかの株式を所有していますが、この本を読んで、投資の対象としての会社だけでなく、もう少し会社の経営にも目を向けることも大事だというが分かりました。
それが結局は、投資家の利益にもなるからです。
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