50年ほど前、東京に出てくる前にまだ田舎に住んでいたころ、近くに開業医がありました。
そしがやは、体が弱かったこともあり、よく通っていました。
そこの医者の奥さんは、田舎には、珍しい、垢ぬけた都会的な女性でした。
いつもしゃれた格好をしていて、田舎町の他の女性たちとはかなり違っていました。
そしがやは、何か都会的なものを感じていました。
その奥さんは、地元の人ではなく、東京から来たのかもしれません。
当時は、そんな奥さんの表面的な姿かたちに目がいっていましたが、今から思えば、その奥さんも田舎町に来て、孤独感を感じていたような気もします。
そんな当時の開業医の奥さんを思わせるような女性の記事を読みました。
手入れの行き届いた髪、美しいフレンチネイルを施した爪。左手薬指には、大粒のダイヤが光る。圧倒的なセレブ妻オーラを放つ美貌の女…高岡沙耶は、そう言って深々と息を吐いた。
同じ店内を見渡すと、溢れているのは、お世辞にも美しいとは言いがたい所帯染みた主婦やママ友の群れだ。
沙耶は、32歳の開業医の妻で地縁のない香川県に住んでいますが、ちょっと周りからはかなり浮いた存在のようです。
沙耶が東京を捨て、香川へやってきたのは2年前。彼女が30歳の時だ。
地元で代々開業医を営む6歳年上の医師と見合い結婚をしたことがきっかけ。
沙耶はもともとは、大阪の出身ですが、東京にあこがれて都内の大学へ入り、都会生活をエンジョイします。
卒業後は、ハイブランドに入社しますが、女性だけの職場の人間関係に疲れ、結婚に活路を見出そうとします。
有名レストランのシェフとの付き合いますが、相手に別の女性がいたことが分かり、別れます。
そんな中、見合い話があり、母の強い勧めもあり、香川県の開業医の男性と結婚します。
高岡家に嫁いでしばらくの間は、ストレスフルだった職場からも婚活戦線からも解放され、東京では考えられないほどの広い敷地に建つ豪邸で、沙耶が存分に開業医の妻としての立場に酔いしれていた。
しかし目新しかった生活にも慣れてしまうと、次に沙耶を襲ったのは激しい後悔だった。
結婚の喜びは、すぐに激しい後悔に変わったようです。
そしてゆっくりと、地元の暇そうな主婦たちが集う、どうにも垢抜けない喫茶店を見渡した。
「いくら素敵なバッグを持っても、綺麗なお洋服を着ても、出かける先がこんな場所じゃぁ...」
そんな風に呟く沙耶が携えているのは、日本には数個しか入荷しなかったというデルヴォーの新作ミニバッグ。そして足元は、エルメスのオラン。
しかしこのバッグの価値をここにいる何人が理解しているだろう。このサンダルがエルメスのものだと、一体何人がわかってくれるだろう。
東京都は違って、彼女のそんなファッションを理解できる人もいない田舎町がイヤなようです。
かなり贅沢な悩みのように思えますが、彼女にとっては、深刻です。
この記事のコメント欄を読むと、「誰の責任でもなく自己責任です。」などというかなり厳しい意見が多かったです。
そしがやもその通りだと思いました。
考え方を変えないとどこへ行っても、後悔するでしょうね。
それとともに、最初に述べた子どもの頃の近くの開業医の奥さんのことを思い出しました。
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