ずっと気になっていた本ですが、amazonのKindle Unlimitedに漫画版が入っていたので、読んでみました。
新書版の原作が話題になっているのは、知っていましたが、まだ読んでいません。
漫画と原作とは、違うことがあるかもしれませんが、とりあえず、漫画版の第1巻を読んだ感想を述べてみます。
最初この本のタイトルを知ったときには、どんな内容か想像できませんでした。
読んでみると児童精神科医である筆者が少年院で知り合った非行少年たちのエピソードです。
第1話の少年は、父親のDVで離婚した母親に育てられ、貧しかったこともあり、6歳のころから万引きをするようになります。
結局、16歳で少年院に入ってきます。
筆者は、そのときに丸いケーキを3つに切るというテストをします。
ある程度の認知機能があれば、問題なくベンツのマークのように3つに分けることができるのですが、この少年は、できません。
この少年は、簡単な数学も解くことができず、IQ(知能指数)は68、軽度知的障害でした。
それでも少年院で模範的に過ごして、退所して、建設会社に勤めますが、知的ハンディのせいで上手く仕事をこなすことができず、カッとなり同僚を殴ってしまい、会社をクビになります。
そんなある日、久々に会った先輩から自分にでも出来る仕事を紹介され、それを引き受けます。
しかし、それは振り込め詐欺の現金の受け子でした。
さらに現金受け渡しの際にヘマをしてしまい、先輩から100万を建て替えるように脅されしまいます。
やむを得ず、付き合っていた彼女から100万円借りてどうにか窮地を脱します。
ですが、彼女からは、催促されて、衝動的に彼女を殺してしまいます。
それで逮捕され、裁判になるという話です。
かなり重いです。
実をいうとタイトルの「ケーキを切れない」と「非行少年たち」とが初めは、結びつかなかったのですが、このエピソードから納得できました。
非行少年の中には、知的に劣っている少年がいるということです。
そしがやが中学のころに、学校には非行少年がいましたが、何人かは、この第1話に出てくる少年のように明らかに知的に劣っていました。
すべての非行少年が知的に劣っていたわけではありませんが、その時の彼らのことを思い出します。
その後、彼らがどうなったか分かりませんが、田舎に帰っても悪い噂は、聞かないので、普通の市民として暮らしているのでしょう。
この漫画に戻ると、普通の漫画のように読んだ後のカタルシスは、ありません。
このように知的に劣った少年たちの前には、厳しい社会の現実がそこにはあるだけです。
主人公の児童精神科医は、「彼にとっては、少年院よりもこの社会の方が生きにくすぎたのかもしれない」という言葉を漏らします。
最後には、この医師の「我々は我々のできることを頑張るしかない」という言葉で終わっています。
この少年の例は、うまく行かなかったケースでしょうが、多くの非行少年は、退所後は社会に順応して生きていると信じたいですね。