60歳でリタイアするときには、仕事を続ける人からは、仕事を辞めると健康に良くないということを言われたことがあります。
リタイアしてしまうと体を動かさなくなり、病気になりやすくなるというのです。
何人かから言われたので、ほぼ定説化していたのでしょう。
メディアでも同じような主張の記事を見かけたことがあります。
ただ個人的には、その主張に対しては、疑問を感じていました。
仕事を続けるとストレスは、蓄積していく一方なので、その方が、健康にはよくないと思っていました。
ですが、あえて反論する積極的な根拠も持っていなかったので、言い返すこともありませんでした。
そんな定説に疑問を呈した記事を読みました。
仕事の引退と健康について、京都大と早稲田大、米ハーバード大の研究チームが日本を含む世界35カ国の50~70歳の10万人超を調べたところ、「仕事をリタイアした人」は働き続けている人よりも心臓病のリスクが低いことがわかった。運動不足になるリスクも低かった。
これって今までの定説とは、異なるものですね。
これまでは、引退すると心臓病リスクが上がるという報告が複数あり、「引退は少なくとも心疾患リスクを引き下げることはない」「長く働いた方がよい」と考えられていました。
そしがやもそういった定説の記事を読んだ記憶があります。
多くの人は、そう考えてきたでしょう。
ですが、今回の調査では、真逆の結果が出ました。
医学的な学説というのは、以前の定説がひっくり返されることがよくありますが、これもその一つでしょう。
その結果、仕事をリタイアした人は働き続けている人より心臓病のリスクが2・2ポイント低かった。仮に日本の60代の就業者が全員引退すると、心臓病患者が約20万人減る計算になるという。
これは、米国、欧州諸国、メキシコ、日本、中国、韓国など35カ国の50~70歳の10万6927人を平均6・7年間追跡し、就労状況と心臓病発症リスクなどの関係を調べたものです。
その際には、高血圧や糖尿病など個人の健康状態や年齢、性別、学歴、遺伝要因、各国の医療制度や労働市場の違いなどの影響を取り除く統計手法を使ったといいます。
しかし、この調査で明らかになった「心臓病のリスクが2・2ポイント低かった」という数字がどの程度大きなものかは、よく分かりません。
正直、微差のような気もします。
つまりリタイアした方が心臓病のリスクが少ないとは、この程度の差では、素人目には何とも言えないようにも思えました。
ただ、リタイアした方が健康に悪いとは言えないことは、確かなようなので、リタイア時に感じていた、長年のモヤモヤとした気持ちが解消されたのは、間違いありません。