予備自衛官という存在は、10年ほど前に読んだ「いざ志願! おひとりさま自衛隊」で知りました。
京都在住の27歳の女性が予備自衛官補の試験に合格して、経験した体験ルポです。
なかなか垣間見ることのできない自衛隊の内部の様子が描かれていて、面白かったです。
なお予備自衛官というのは、予備自衛官補の試験に合格し、所定の訓練を終了すると任用されます。
そんな予備自衛官ですが、今回読んだ記事は、同じ予備自衛官でも技能の分野で応募した50歳代の男性のものです。
予備自衛官には、2種類あり、一般は、18歳以上34歳未満、技能は、保有する技能に応じ53歳~55歳未満になります。
技能には、医療従事者や語学/通訳要員などがあり、英語だと英検準1級以上が条件になっています。
49歳で外資系証券会社を退職後、一念発起して自衛隊未経験ながら「予備自衛官」になるべく英検1級を取得し、予備自衛官補(技能)の出願資格を獲得し、試験にも無事合格。
社会人になって一度も日本の会社で働いたことのなかった筆者が、日本で最も規律の厳しい組織のひとつである自衛隊で受けた訓練とは、いったいどのようなものだったのか。
実際に駐屯地の隊舎に缶詰になって訓練を体験した民間人でないとわからない、自衛隊での訓練内容と隊舎の中で見える風景とは――。
実をいうとそしがやも最初に取り上げた「いざ志願! おひとりさま自衛隊」を読んだときにこの予備自衛官の制度に関心を持ち、調べたことがあります。
当時は、東日本大震災のあとで自衛隊の活躍を見ていて、自分も何か役立ちたいという気持ちがあったのです。
その頃は、50歳代後半でしたが、英検準1級を持っていたので、もっと若ければ、受験資格があったことになりますが、年齢的に無理でした。
さてこの記事に戻りますが、筆者が感じたのは、予備自衛官の訓練には、プライバシーのなさと共に選択の自由のなさだったといいます。
起床から就寝まで、食事も訓練も風呂もスケジュールは全部決まっていて、タイミングは同部屋の人たちとすべて一緒。どの服装かも決まっている。
それに食事のメニューも1つだけです。
普通だとこういう環境がストレスになりそうですが、筆者は意外にも爽快に感じたそうです。
その理由としては、以下のことを挙げています。
【1】「過剰な選択と決断」は強いストレスだった
こだわりが強い自分は、無意識のうちに日常の非常に多くの些細なことまで膨大な数の選択肢を準備してどれを選ぶかを毎回毎回決断していたが、実はその「過剰な選択と決断」は強いストレスだった。
【2】誤った選択をして自分を責める必要がない
「選択の自由」とは、自分の選択が裏目に出た場合、他人を責めることはできず結果を自分自身で受け入れなければならないことを意味する。
今の日本社会では、選択肢があることがいいことだとされていますが、逆にストレスを与えていたというのです。
これって何か皮肉なことです。
また自分が選択した結果を受け入れるのも辛いことだと述べていますが、それもまさにその通りですね。
「こだわりが強すぎると、他人が決めてくれたことを無条件に受け入れることがむしろ気持ち良くなる」というすごいパラドックス。
こう見てくると不自由な時には、自由を求め、自由過ぎてしまうと不自由さが恋しくなるという人間の心理を突いていますね。
ほかにもこの訓練で、ビジネス上必要なスキルとの共通点が多いことに気づいたり、身だしなみの大切さを知ったりしたようです。
だが、訓練を乗り越えたあとは、ホッとした気持ちと「何かをやり遂げた」という充足感がないまぜになり、「自分が万が一のときに(ないことことを祈っているが)誰かの役に立てるかもしれない」という前向きな気持ちに包まれた。
最後には、このように充足感を得たようです。
ただこういう訓練は、人によっては馴染めない人もいるので、万人に言えることではないのも確かでしょう。
個人的には、技能の予備自衛官は、もっと年齢要件を緩めてもいいのではないかと感じました。
55歳までという条件ですが、今は元気な人も多いので、60歳までにしてもいいのではないかと思いました。