この本のタイトルの「天皇家の恋愛」というと最近では、真子内親王の小室圭との結婚をイメージする人が多いでしょう。
メディアでもいろいろと報道されてきたので、多くの人にとってはそしがやと同じように関心を持っていると思います。
ですが、この本を読むと明治天皇以降、天皇家では、当時の国民の恋愛観、結婚観に沿ったそれぞれの恋愛があったことが分かります。
著者は、長らく皇室担当の新聞記者だった人で、明治天皇、大正天皇、昭和天皇とそれぞれの婚姻の事情について一次資料を駆使して、説明しています。
勿論、それぞれが興味深いのですが、この本の一番のトピックは、現上皇が明仁皇太子時代の正田美智子との結婚をめぐるエピソードでしょう。
それまでの天皇家とは異なって、初めて恋愛で結婚したと言われているからです。
紙面をかなり割いています。
ですが、宮内庁の動きを知った田安家が娘の縁談をまとめてしまいます。
2番目は、皇太子の学友の妹。これも断られます。
3番目が旧皇族の娘。
これは、戦前の宮中某重大事件を思わせる色覚障碍が理由で消えます。
4番目が大学教授の長女。
これも宮内庁の動きを察知して、教授側がさっさと縁談を決めてしまいます。
正田美智子は、5番目の候補でした。
正田家や美智子自身も最初は、断りますが、宮内庁と皇太子自身の説得で婚姻に至ったということです。
著者によれば、七割のアレンジと三割の恋愛だったと結論付けています。
そしがやも明仁皇太子と正田美智子との結婚は、物心つく前のことで記憶にありません。
親からは、庶民から皇太子妃を迎えたということで、その当時の人気ぶりを聞いていました。
今回、この本を読んで明仁皇太子の婚姻の真実の姿を知って、今まで持っていたイメージとは、異なっていたので、かなり意外に感じました。
この婚姻によって、一般の国民の間にも恋愛結婚が一般化したとも述べています。
それ以前の皇族の結婚は、家柄を重視して、婚姻は、決まっていました。
それは、国民も同様でした。
著者によると天皇家の婚姻と国民の結婚観とは、連動していると指摘しています。
この本によって、いままで知らなかった明治天皇以降の婚姻事情についての認識が深まりました。
ただ、ちょっと残念だったのは、明仁上皇以降の徳仁天皇や秋篠宮の婚姻には、触れずにいきなり、最近の眞子内親王の婚姻をめぐるエピソードに飛んでしまったことです。
紙面の事情があったのかもしれませんが、次の機会ににはぜひ書いてほしいものです。