そしがやのリタイア日記

リタイアした公務員の日々の生活を書いていきます。学生生活、投資、などなどです。

失敗の本質

小学生のころは、ずっと軍事オタクで第二次世界大戦の戦記物をよく読んでいました。

その時に考えていたのは、なぜ日本軍は、第二次世界大戦で負けたのか、ということでした。

例えば、ミッドウェイ海戦連合艦隊がこうしたら勝てたのではないか、といろいろと検討するのが好きでした。

 

その後、個々の戦いを扱った戦記物だけでなく、第二次世界大戦の全体像を扱った書籍を読むようになり、近代戦は、総力戦になるので、国力において、アメリカに劣る日本が最後には、勝てないというのがわかりました。

またそれだけでなく、当時のエリート人材を集めたはずの日本軍の組織にも根本的な欠点があったのではないかとも思えるようになりました。

 

最近読んだ『失敗の本質』は、そんな日本軍の失敗の本質について触れた本です。

 

 

第1章では、失敗の事例として、ノモンハン事件、ミッドウェイ作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ海戦、沖縄戦の5つの作戦について個別に分析しています。
最初の事例であるノモンハン事件では、日本軍は、敵情不明のまま傭兵規模の測定を誤り、兵力逐次使用の誤りを繰り返しました。

また過度の精神主義により、敵を知らず、己を知らず、敵を侮っていました。

それに統帥上も中央と現地の意思疎通が不十分で、意見が対立すると積極策を主張する幕僚が慎重論を押し切り、上司もこれを許したともこの本では分析しています。

これって、その後の4つの作戦でも共通する日本軍の欠点です。

 

ノモンハン事件の敵であるソ連ジューコフ司令官は、「日本軍の下士官兵は頑強で勇敢であり、青年将校は狂信的な頑強さで戦うが、高級将校は無能である」と評価しています。

このジューコフ司令官の言葉に当時の日本軍の本質があらわされているように感じました。

 

第2章では、以上の5つの作戦から見える日本軍の失敗の本質について分析しています。
戦略上の失敗要因と組織上の失敗要因とに分けています。

前者についていえば、あいまいな戦略目的、短期決戦の戦略志向、主観的な戦略策定、狭くて進化のない戦略オプション、アンバランスな戦闘技術体系だとしています。

ここに読んでいくとまさにその通りだと納得せざるを得ませんが、何が現在にも通じる日本の組織の持つ欠点を見せつけられたようで、正直読んでいてけして、気持ちいいものではありません。

 

後者で人的ネットワーク偏重の組織構造、属人的な組織、プロセスや動機を重視した評価が紹介されています。

その対比としてミッドウェイ作戦以降の日本軍の敵であったアメリカ軍との比較において分析しています。

これを読むとアメリカ軍が勝ったのは、アメリカの経済力だけでなく、軍の組織力の強さにもあったということがわかります。

 

第3章では、失敗の教訓ということで日本軍の失敗を受けて、どうしたらいいのかについて述べています。

戦後、日本企業が奇跡的な成長を遂げたのは、財閥解体公職追放によって、伝統的な指導層がいなくなり、若手の抜擢が行われたからだとしています。

その結果、官僚制の破壊と組織民主化が進展し、日本軍の最もすぐれていた下士官や兵のバイタリティが沸き上がるような組織が誕生したと指摘しています。

ですが、これって、外圧によるもので、幕末にも共通するものにも思えますね。

日本って、外圧がないと変われないのが悲しいです。

 

戦後40年経ち、戦後の革新的であった人たちもまた老い、長老支配になり、戦前の日本軍と同様の組織となっていると述べています。

つまり過去の成功体験が固定化し、学習がしにくい組織になっているとのことです。

最後にこの本の結論としては、日本的な企業組織も新たなる環境に対応するためには、自己革新能力を創造する必要があると締めくくっています。

 

初版は、30年以上前に書かれた本ですが、これら分析は、説得力がありますね。

ただこの本を読んでいると繰り返しが多いです。

2章と3章は、1章でも取り上げられた部分の重複が多いので、この部分をもう少しすっきりさせると読みやすくなったと思います。

それにしても過去の成功体験に酔い、長老支配になっているというのは、現代日本企業の衰退を見ると当たっていて、びっくりするくらいですね。

 

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