そしがやのリタイア日記

リタイアした公務員の日々の生活を書いていきます。学生生活、投資、などなどです。

政子の演説

 

大河ドラマというとここ最近は、ずっと見てきていますが、印象に残ったものを上げると三谷幸喜の脚本のものが多いです。
2004年の新選組と2016年の真田丸です。
そんなわけで今回の鎌倉殿の13人も期待していました。


前回の第47回まで見てきた印象でいうと今回の作品は、三谷の作品の中でも一番出来がいいのではないかと感じました。

前回は、朝廷と鎌倉幕府とが対立する承久の変の前夜を描いたものです。
主人公の北条義時は、後鳥羽上皇との対立を解消して、鎌倉を守るために自分の首を差し出そうと決心しています。
今までの義時の行動は、闇落ちしたともいわれていたが、それまでの行為は、すべて鎌倉を守るためのものだったことが明らかになります。
この三谷作品での登場人物は、亡くなる前には、それまでの悪行を忘れさせるようなその人の好さを強調するエピソードで終わるので、義時の場合も死亡フラグが立ったともいえます。

 

そんな義時の決意を知り、政子は御家人たちの前で有名な演説を行います。
「右大臣(頼朝)の御恩は、山よりも高く、海よりも深い」という有名なフレーズの原稿を一度は読み始めたものの「本当のことを申します」と、紙を捨てて、自分の言葉で語り始めます。

後鳥羽上皇の狙いは幕府ではなく義時の命であること、義時はその求めに応じ、命を差し出す覚悟をすでにしていること。

そこまで語り「ここで皆さんに聞きたいの。あなた方はそれで本当に良いのですか?」と問いかけます。

 

実朝亡き後、独裁者のようになっていった義時が生真面目さのせい、すべてこの鎌倉を守るためだったと御家人たちに伝えます。

「一度たりとも私欲に走ったことはありません」ときっぱり語ります。

最後には、「選ぶ道は二つ。未来永劫西のいいなりになるか、戦って坂東武者の世をつくるか。ならば、答えは決まっています」と畳みかけます。

 

原作ともいうべき吾妻鑑とは違った解釈のセリフでした。
ですが、ドラマの演説を聞いているとこのほうのが御家人たちへアピールするのではないかと思いました。
吾妻鑑では、頼朝の恩を忘れるなということを強調していましたが、今回の政子の演説では、弟である義時がこのように身を捨てる覚悟をしていることを伝えて、朝廷の言いなりになっていいのかと、御家人たちのプライドに訴えかけています。

三谷の脚本は、吾妻鑑とは違った解釈をたびたびしてきたが、実際の史実は、このようであったかもしれないと思わせてくれて、説得力がありました。

 

政子の演説に戻るとそんな演説の結果、義時の命は、姉の政子によって救われます。
ここまで見てくると歴史上の物語という側面もありますが、北条家の家族の物語でもあるともいえます。
この演説のシーンは、これまで見続けてきたこのドラマの中でも一番の名シーンといってもいいものでした。
実をいうと思わず涙してしまいました。
政子の弟の義時に対する気持ちが伝わってきました。


この演説シーンでは、息子の泰時がこの政子の演説を受けて、次のように呼応します。
「今こそ一致団結し、尼将軍をお守りし、執権殿のもと、敵を打ち払う。ここにいる者たちは皆、その思いでいるはずです!」
今までは何かと父である義時と対立しがちであったが、ここに及んで、親子の和解がなった瞬間でした。

北条の家族は、ほかにも弟の時房や妹の実以との間もまとまります。
とはいえ、完全に一枚岩化といえば、そうでもなく、妻ののえが実の息子の政村を執権したいと気持ちが強すぎて、泰時を押す夫の義時と対立しています。
これが最終回に向けてどういう結末を迎えるかが楽しみです。

 

最終回は、義時がどのような死を迎えるかでネット上は、いろいろな推測がなされています。

三谷がアガサ・クリスティの作品をヒントにしたという発言をしているので、「オリエント急行殺人事件」のトリックを使うのではないか、「そして誰もいなくなった」ではないか、などなどです。

そしがやは、「オリエント急行殺人事件」ではないかと思っていましたが、今回の政子の演説でその目はなくなったようです。

さてどういう結末を義時は迎えるのか。

平凡に病死するのか、妻ののえが毒殺するのか。

ただ一つ言えるのは、三谷の脚本は、今まで視聴者の予想を超えてきたので、それ以上の結末があるような気がしています。

今から最終回が楽しみだし、終わったあとのロスがつらいです。