2019年に老後資金2000万円が足らないという問題が世間を騒がせました。
普通の高齢世帯では老後に約2000万円が足らなくなるというものです。
メディアでも大きく取り上げれました。
ですが、最近は、まったく聞かなくなりました。
どうなったのか不思議に思っていたら、こんな記事を読みました。
これは総務省の「家計調査報告」を2017年の分から最近まで調べたものです。「2000万円問題」が話題になったのは2019年の6月3日に金融庁の金融審議会 市場ワーキンググループの報告書が出た時のことです。その報告書が出た時点では2017年のデータしかありませんでしたので、上記の表のように収入と支出の差が毎月5万4519円となっています。これを30年分に単純に引き直すと1963万円になりますから、「約2000万円不足する」というロジックだったわけです。
このロジックについては、覚えています。
ですが、この「家計調査報告」をよく見ると興味深いことが分かってきます。
ところが翌年2018年のデータがそのすぐ後に出ましたが、それを見ると不足額は約1500万円となっています。さらに2019年になると今度は約1200万円と年々減少してきて、つい先頃発表された2020年版では何と不足額は30年間で55万円となっています。「2000万円問題」は知らないうちに「55万円問題」になってしまっていたのです。
つまり2017年では、不足額は、約2000万円だったものが、毎年減り続け、2020年では、55万円になってしまったというものです。
ただ2020年の数字には、その年の特殊事情があったと説明しています。
コロナ渦です。
10万円の特別給付金もあったし、高齢世帯の場合は、外食や旅行を控えたという影響もあったと述べています。
そんなわけで、筆者は、「要はどこかの時点での数字だけを取り上げて大騒ぎしても意味が無いということなのです。」と主張しています。
つまり2017年の約2000万円足りないということをことさら強調してもあまり意味のないということです。
収入と支出だけを見ていると確かに5万4519円の不足ですが、一方では貯蓄が2500万円近くあるのです。つまり、この図表が示しているのは、「毎月の収支が5万5000円ぐらい赤字だから老後は2000万円足らない」などということではなく「2500万円も貯蓄を持っているからそれを少しずつ取り崩しながら、毎月お金を使っている」ということなのです。
つまりこの表によれば、高齢者世帯は、2017年の足りない分は、2500万円の貯金で毎年補えるということです。
このペースで30年間生活しても毎月の不足額を累計して2000万円ですから、それでもまだ500万円が余る勘定になります。私が最初から「2000万円問題なんて存在しない」と言い続けているのはこういう理由があるからです。
筆者は、「2000万円問題なんて存在しない」とはっきりと断言しています。
最後は、「なーんだ」という結論です。
メディアの場合、特定の都合のいい部分だけ取り上げて、批判することが多いのですが、この2000万円問題もその典型例だったようです。
この記事を読んで2000万円問題が最近すっかり話題にならない理由が分かりました。
メディアは、報道した後は、その後のフォローをしないのが、常ですが、しっかりと後追い報道もするのがメディアの義務でしょう。
とはいえ、これは、統計上の数字で、実際には、老後資金が足らない世帯もあるのは確かなので、何もしなくてもいいということではなく、老後に備えて、資産形成する必要のあることは間違いないです。