最近、久しぶりに推理小説を読みました。
新川帆立の「元彼の遺言状」です。
多分、推理物を読んだのは、4、5年前の東野圭吾の小説以来です。
この頃は、マネー本や投資本ばかりだったので、新鮮に読めました。
この小説を読む直接のきっかけは、4月から綾瀬はるか主演でドラマが始まるからということが大きいです。
実にミーハーですが、こういう人って多いでしょう。
最寄りの駅の大型書店に行ったら、綾瀬はるかの写真の載った帯のこの本が大量に平積みになっていました。
もう一つの理由は、作者が7年前までそしがやが所属していた小説教室の出身だということです。
作者の新川帆立は、そしがやが退会してから入会したので、直接面識はありませんが、その小説教室から本を出す人の作品は、だいたい目を通すようにしています。
小説教室からは、毎年数人づつデビューして来ましたが、彼女の今回の作品が一番売れているようです。
さて、この小説そのものに戻りますが、読んで感じたのは、最初のつかみが見事ということです。
小説教室では、最初の5ページを読んで面白くないと買ってもらえないと言われてました。
この小説は、そのセオリー通りの本です。
第1章の冒頭で付き合っている男からプロポーズをされた、女主人公の弁護士である剣持麗子が、渡された安っぽい婚約指輪のショボさに怒りを爆発させ、「内臓を売ってこい!」というシーンから始まります。
昭和の時代に見たヤクザまがいの借金取りが返済を迫るドラマのセリフみたいです。
読者としては、読んでみたいという気持ちになります。
小説の魅力の一つには、主人公のキャラが立っている必要がありますが、このあたりですでに読者の気持ちをわしづかみです。
それに一種のピカレスク(悪漢)小説の面もありますね。
それに、推理小説の冒頭の定番は、奇妙な出だしです。
つまり謎が読者をどこまで引き付けるかということです。
元彼が「僕を殺した犯人に財産を譲る」という遺言状を残して亡くなります。
その元彼は、大手製薬会社の御曹司なので、遺産額は莫大です。
犯人候補に名乗り出た元彼の友人の代理人として、その遺産をかすめ取るために「犯人選考会」にその友人と共に麗子が参加するという設定です。
ちょっとあり得ない、かなり無理な設定ですが、作者が弁護士ということもあり、法律の専門用語が出てきて、マンガ的なストーリー展開の中にも説得力があり、強引に読ませてしまいます。
読み続けていくと最初は、守銭奴のような嫌な主人公だと思った麗子が意外といい奴だと思えてくるから、不思議です。
2日間で一気に読んでしまいましたが、ドラマごとに役を変えてきた綾瀬はるかがどのように剣持麗子を演ずるか、楽しみになりました。