大河ドラマの「光る君へ」をずっと見ています。
平安時代については、予備知識のないままに視聴し始めましたが、脚本がいいせいか、飽きずに毎回45分を楽しんでいます。
今までは、平安時代の貴族については、毎日、和歌を詠んだり、蹴鞠をしたりといったステレオタイプのイメージしかなかったのですが、今回、読み始めた本が従来の貴族のイメージを変えるほど意外でかなり面白かったです。
殴り合う貴族たち (角川ソフィア文庫 I 107-1) 繁田 信一 (著)
今回の本は、大河ドラマにも登場する藤原実資の書いた日記である小右記をもとにしています。
この小右記は、恣意的なところがなく、それなりに信用できる内容だと見なされているものです。
ここで取り上げられている貴族たちのエピソードは、かなり驚くべきものです。
この中でも一番印象が残っているのが、敦明親王です。
三条天皇の皇子ですが、自分が皇位を継げなかったせいか、いろいろな場面で親王の従者たちが暴力事件を起こしています。
加茂祭使の行列で親王が行列を見学するために場所を確保するために、すでに来ていた人々を追い払うために見境なく従者たちに暴力を振るわさせています。
また遺恨のある高階業敏という元長門守に殴る蹴るの暴行をやはり従者たちに加えさせています。
その弟である高階成章も同様の被害を受けています。
この本では、ほかにも藤原道兼の息子たちの暴力事件も取り上げられています。
大河ドラマにも登場する藤原道長の兄の道兼は、紫式部の母を殺したという設定になっていますが、その道兼の息子の兼隆は、馬を管理する従者を別の従者によって殴り殺させたという記事が小右記には載っています。
無論、貴族たちが直接手を下すことはなく、従者たちが実際の暴力行為を行っているのですが、こんなところから武士の発生の萌芽がみられるような気もします。
こんな記事の中でも一番びっくりするのが、犬に食い殺されてしまった皇女です。
花山天皇の皇女が盗賊に襲われ、屋敷から連れ出され、衣類をはぎ取られた上、路上に打ち捨てられ、誰にも助け貰えなかったというものです。
その後、野犬の餌食になってしまい、翌日に発見されてしまったという内容です。
この本の中には、理不尽なエピソードがいくつもありますが、その中でも最も悲惨なものです。
ただこの本の分りにくい点を言えば、内容が時系列で進んでいないので、途中に過去の事例がまた登場したり、同じ人物が再度現れたりするので、混乱します。
もう少し整理して書けなかったのかな、と思います。
内容が面白いだけに残念です。
とは言え、源氏物語などの王朝物語には登場しない歴史のダークな側面を垣間見ることができるので、貴重な本だと思います。