今回、AmazonのブラックフライデイでKindle Unlimitedが本来は、1か月980円のところ、3か月99円というキャンペーンをやっていたので、加入しました。
その中でいろいろと本を探していたら、以前読んだことのあった本多静六の「私の財産告白」を見つけ、再読しました。
以前読んだのは、もうかなり前で30年ほど前のことでしょうか。
著者の本多静六は、幕末の慶応2年に埼玉県に生まれました。
苦学して、明治17年に東京山林学校(現在の東大農学部)に入学して、一度は落第するも猛勉強して首席で卒業。
その後、ドイツに留学してミュンヘン大学で経済学の博士号を得た人物です。
明治25年、東京農科大学の助教授となり、「4分の1天引き貯金」を開始します。
天引き貯金でためたお金で株式と山林に投資します。
山林投資というのが時代を感じさせますが、現代でいえば、不動産投資でしょうか。
これが彼の投資人生の始まりになります。
このあたりのエピソードは、いろいろな投資本でも紹介されていますので、ご存じの方も多いでしょう。
最初にこの本を読んだときには、再現性が高いと思い、かなり刺激を受けたものです。
それに明治という時代の知識人にこのように投資についてあからさまに述べる人がいたというのにも驚かされました。
彼の著作には、現代にも通じるものを感じたものです。
本多は、1900年には教授に昇任し、研究生活のかたわら植林・造園・産業振興など多方面で活躍しました。
有名なのは、明治神宮の森の策定にかかわったことです。
そんな本多は、このように独自の蓄財投資法と生活哲学を実践して莫大な財産を築きましたが、大学の停年と同時に全財産を匿名で社会福祉法人に寄付しました。
今回、この本を再読してみて、以前読んだときには、あまり気にも留めなかったいくつかのエピソードが印象に残りました。
その中でも同じ埼玉県出身の渋沢栄一とのものが興味深かったです。
大学に職を得たばかりのころ、埼玉県の学生のために育英資金を集めようと渋沢栄一の自宅に押し掛けます。
渋沢は、理屈に合わないことは、取り合わなかったが、ただいったん引き受けると、親身になったくれたという逸話です。
渋沢は、本多の育英資金の話には、最初は、積極的ではなかったのですが、本多が自分の貯金の300円を兵児帯から出したときには、渋沢は、本多の熱意を分かったようで、6000円を出してくれました。
当時の6000円がどのくらいかというとその時大学の助教授だった本多の年棒が
800円だったといいます。
だから当時の1円は、今の1万円くらいでしょうか。
それにしても6000円というのは、大変な金額ですね。
その後も本多以上に熱心に育英資金に対して応援してくれたというものです。
なぜ渋沢のエピソードが印象に残ったかと言えば、昨年の大河ドラマで渋沢栄一を取り上げていたので、そしがや自身も渋沢に興味を持ち、何冊かの本を読んでいたからです。
他にも本多は、渋沢の人物にも触れ、いくつかの事業にも参加したが、けしておのれの儲けには、執着することがなかったと述べています。
ある意味では、馬鹿正直だったとも言っています。
自分が関わった会社の設立でも儲けは、ほかの人に取られてしまっても、会社が発展すればいいことだというのです。
他にもいくつかの当時の有名人の逸話があって、現代ではすっかり忘れられている人もいましたが、すでに紹介した渋沢を始めとして、本多がそれらの人物たちをどう見ていたかが分かり、面白かったです。
この本は、投資本の古典とも言うべきものですが、今回、また目を通してみて、30年前とは違う視点で読むことができた気がします。
また何年か経ったときにまた読むかもしれませんが、その時には前回や今回とは違った発見がありそうな本でした。