村上世彰と言うとかつては物言う株主として名をはせた人物です。
株主の権利よりも経営者の論理が優先される日本社会に異議を申し立てたその姿は、カッコいいと思ったものです。
そしがやもその著書の生涯投資家を読んで、投資家として、正論を述べる彼には、興味を持ってきました。
そんな村上世彰ですが、ちょっと意外な発言をしていたので、取り上げたいと思います。
村上世彰氏(以下、村上氏):今、一番気になっていることを言ってもいいですか。日本の貧富の差の拡大です。このままだと日本で暴動が起きますよ。リーマン・ショックの後に米ウォール街で暴動が起きたのと同じことが日本でも起きます。だから貧富の格差を解消しなければいけない。格差は本当に怖い。ない方が絶対いいに決まっている。格差がなく、みんなが割と穏やかに幸せに暮らせる国にすることが、行政にとっても政治にとっても一番求められることなのです。そうしないと国に安定感が出ません。
10月から消費税が10%になりましたが、こうした間接税は低所得層を直撃しさらなる格差拡大が懸念されます。しかも消費税の限界はせいぜい20%台でしょう。となると税収はなかなか増やせません。持続的に日本が生き残っていくには消費税ではない財源がないといけません。ではどうすればいいのか。
税収について言及しています。
確かに消費税も限界があります。
高いと言われる北欧諸国を見ても25%くらいです。
日本でも彼が述べるように20%台が限界だというのは、理解できます。
私がここ1~2年、訴えているのが資産課税です。富裕層や企業の持つお金や株などの金融資産に課税するのです。つまりフローではなくストックに課税するということです。これは消費税より取りやすく、取ることに意味もあります。お金の流れを止めているところにピンポイントで課税するので、ため込んでいても意味がないと家計や企業が資金を投資などに回すようになります。資産、つまり寝ているお金が動く=回ると経済は必ず良くなります。
ここで彼は、資産課税を訴えています。
これって、それまでの彼を知るものにとっては、予想もできなかった発言でした。
株式投資家としてかなりの資産を築いたはずの村上にとっては、自己否定するような発言に思えます。
不遜な言い方になってしまいますが、私もこれだけお金持ちにさせてもらいましたが、自分の中で子供にお金を残したいという思いは全くない。お金は使わなければ意味がないと思っているので、お金をぐるぐる回すことに生きがいを感じているのです。ですが貧富の格差があるとお金が回らなくなり、経済自体が悪くなります。そしていずれ暴動が起きるのです。まさに今の日本がそうです。また投資という観点で見ても、長い目で見ればその方が社会全体が得をすると思っています。経済が活性化されて社会も安定するのですから。
貧富の差があるとお金が回らなくなり、経済自体が悪くなり、暴動が起きるとしています。
確かに極端な貧富の差が生じるとそういう可能性もあるでしょう。
ですが、この論理には、かなり違和感を感じます。
資産課税をすると努力してもしなくても同じになりがちなので、その方が経済が悪くなるのは、歴史が証明しています。
かつての毛沢東時代の中国がその例です。
貧富の差はなくなるかもしれませんが、結果としてみな貧乏になる社会でした。
それに資産を持った有能な人が日本から逃げ出すことになりそうです。
その結果、日本は、ますます経済が回らなくなり、みなが貧困に陥るという悲惨な状況になるでしょう。
それにセミリタイアなんてできなくなりますね。
セミリタイアしている人は、努力して資産を貯めて、リタイアしているのですから、そんな努力の結果に課税されてしまっては、リタイアなんて夢のような世界になります。
彼の生涯投資家を読んだときには、個人の努力を尊重する人物だと思っていたのですが、今回の発言は、それまでとは真逆の発言なので、かなり驚きました。
日本社会の現状に彼なりに不安を感じているのでしょうが、個人的には、彼には、アメリカの資産家のように寄付等でその資産を社会に還元するようにしてほしいですね。