以前、ある雑誌を読んでいたら、日本の税金が高いので、富裕層が日本から逃げ出しているという記事がありました。
その行き先は、シンガポールが多いようでした。
その記事を読んで、感じたのは、シンガポールに住んだ富裕層が実際には、そのような生活をしているかということでした。
幸せに暮らしているかどうかということです。
こんな記事を見つけました。
資産5億円以上の「超富裕層」のなかには、税逃れのため海外に移住し、悠々自適の生活を送る人たちがいる。しかし、彼らの一部は幸せを享受できず、「日本に帰りたい」とこぼす者もいるという。なぜなのか。実名ノンフィクション『プライベートバンカー 完結版 節税攻防都市』(講談社プラスα文庫)で、超富裕層の実態を描いた清武英利氏に聞いた――。
この記事は、かつての有名人の著作をもとにしたものでした。
2004年8月より読売巨人軍球団代表兼編成本部長になり、11年11月、専務取締役球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行を解任され、係争になった人でした。
一時期、よく新聞に載っていた人です。
いまは、こういうノンフィクションを書いていたのですね。
一生遊んで暮らしてもお釣りが数十億円も来るような富を持っている人を遠目で見て、うらやましいとため息を漏らす人もいるかもしれません。そんな人たちの生き方も描いたわけですが、しかし先に結論をいうと、彼らの多くは、どうも幸せそうには見えない。
このノンフィクションでは、超富裕層の資金を本人に代わって運用するプライベートバンカーを主人公にして、話が進みます。
その中に顧客であるシンガポールに来た富裕層が描かれています。
ですが、多くは、幸せそうには見えないようです。
例えば、相続税。日本の相続税は最高税率55%と高いので、シンガポールなど税率の低い国で相続したい。しかし、日本での納税を避けるためには、「5年ルール」をクリアする必要がありました。当然のことですが、家族ともども海外に5年以上居住して永住権を獲得しなければ、日本の税制からは逃れられないのです。
その理由として大きいのは、相続の問題があります。
シンガポールで相続させるためには、5年以上現地に居住して、永住権を獲得する必要があります。
また暗黙のルールとして、183日ルールもあり、1年間の半分は、現地に住まなくてはいけないようです。
そうすると5年間ただただ異国の地で時が経つのを待ち続ける生活、慣れない暮らしを強いられるわけです。
そのうちに家族のほうが耐えられなくて帰国してしまったり、夫婦仲や親子関係に問題が起こったりします。
その5年ルールも2017年には、10年に変更になりました。
故郷の土に眠りたい。畳の上で死にたい。つまり「日本で死にたい」ということです。年をとって病気がちになれば日本の高度な医療を受けたくなるし、大事な人の死に立ち会えないことも増える。死が現実的になった時に、自分の死に方が脳裏をよぎるのではないでしょうか。
超富裕層でも、行き着くところは「普通の幸せ」なのかもしれません。本書で彼らの人生を追って気づいたことは、大金持ちでも幸せとは限らない、いえ、大金持ちだからこそ、かなえることが難しい幸せがある――ということなのです。
最後には、超富裕層でも普通の幸せを求めるようです。
ここまで読んでくると税金逃れのために外国へ逃れたもののやはり、生まれ育った日本が恋しくなるという当たり前の結論が見えてきます。
お金は、ある程度までは人を幸せにしますが、あまりにも多くなると返って不幸にする場合もあるということでしょうか。
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