橘玲の本は、大体、読んでいますが、彼の経歴については、ほとんど知りませんでした。
彼自身が、自分の経歴等を今まで明らかにして来なかったということが一番大きかったのですが、今回の本でどういう風にして「橘玲」が出来あがったかが少しわかった気が
します。
今回の本は、大学を出てから、出版業界に飛び込み、底辺の編集者として過ごした80年代が描かれています。
当時の業界の内輪話が面白く、意外な事実がわかって、興味深いです。
例えば、「ギャルズライフ」「キャロットギャルズ」の ティーンズ雑誌の編集に著者が関わっていたとか、スポーツ新聞やB級雑誌に広告がよく載っていた海外の宝くじにも関係していたとか。
ティーンズ雑誌は、確かに国会でも議論されたくらい話題になりました。
海外の宝くじもかなり胡散臭いと思いながら、広告を眺めていました。
そんな事実を読みながら、ちょっと感慨深く80年代のことを思い出しました。
年代もそんなに変わらないので、当時の時代背景とかも懐かしいです。
当時は、バブル前で今の出版業界では、考えられないほど新しい企画をすれば、儲かったようです。
そんな隙間を埋めるようなアイデアをどんどん生み出して行った著者には、やはりその後大活躍する「橘玲」になる兆しがあったのでしょう。
優秀な編集者だったようです。
ですが、危うい面もあったようで、その当時、一緒に仕事をした編集者や友人の末路は、少し悲惨です。
著者のように成功した例は、稀で逮捕されたりとか、うつ病で入退院を繰り返したりとか、今は、もう連絡の取れなくなった人もいます。
あとがきでこれは、「記憶のなかの物語」だと著者は、述べています。
だから、必ずしも事実そのままではないかもしれません。
ですが、ずっと読んできて、最後の言葉が印象的です。
その後ぼくは、「世の中の仕組みはどうなっているのか」とか、「どうやったらもうちょっとうまく生きられるようになるか」というような本を何冊か書くが、そのとき気づいたことを最初から知っていればまったくちがった人生になったと思う。でもそれは、ものすごくつまらない人生だったかもしれない。
やはり人生は、いろいろな試行錯誤があるから、面白いようです。
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