橘玲の本は、出版されると読むようにしています。
好きな作家です。
毎回難しいテーマを独自の視点で、ちょっと皮肉も交えながら、やさしく解説してくれるのが魅力です。
今回は、「読まなくてもいい本」の読書案内という本です。
橘玲の本のタイトルは逆説的なものが多いのですが、この本のタイトルの「読まなくてもいい本」は、本当に読まなくてもいい本と誤解されてしまうようです。
内容を見てみると、そんなことはなくて、今日の知の最前線と言われる分野を要領よく簡単に説明したものです。
内容の難しいのもありますが、どんな点が注目されているか、はわかります。
一番面白く読んだのは、最後の功利主義のところで「トレードオフ」について説明した箇所です。
経済学では、二つ欲しいが一つ手に入れると、もう一つが手に入らないことをトレードオフと言います。
100円しかないが、両方とも100円するオレンジとリンゴが両方とも欲しいケースがその例にあたります。
普通に考えれば、どちらかをあきらめればいいのですが、世の中にも両方とも買えるという「正義」が存在するというのです。
その「正義」の説明としては、
1 非合理性 ポケットには100円しかないが、200円のものが買えるはずだ
2 ユートピア志向 どこかには、100円で200円の物が買える世界があるはずだ
3 他罰性 100円の物を200円で売る果物屋は間違っている
この「正義」の結果はどうなるでしょうか。
暴力になるでしょう。
個人だとテロだし、多数だと革命や戦争になります。
「正義」のために全体が不幸なことになります。
先進国と言われる国では、そのことが長年の悲惨な経験から、分かってきたので、もうこんな人殺しが起きることはなくなったと述べています。
ですが、世界の国や地域では、まだこの教訓を学んでいない国があると言っています。
「正義」が人を不幸にする、ということです。
他にもいろいろと面白い解説があります。
各章の最後には、読むべき本の紹介がありますから、知的なことに関心のある人には、参考になる本だと思います。
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