大学院には、いろいろな学生がいますが、いつも落ち着きがなく、授業とは関係ない、自分の関心のある個人的なことを唐突に教員に話しかけたり、トイレに行くといって教室から勝手に抜けだしたりする学生がいます。
授業中もノートをとるわけでもなく、ぼんやりしているようで、集中力にかけている様子です。
学部から上がってきた学生らしくて、まだ20歳代前半です。
教員によっては、そんな学生に対して、授業中のルールを守れと苦々しく思っている人もいますが、そんな態度を受け入れているのか、何も言わない教授もいます。
後で別の学生に聞くと「奴は、発達障害だよ」と言っていたので、なんとなくそれまでのその学生の行動が腑に落ちた気がしました。
そんな発達障害ですが、「天才と発達障害」岩波明著を読みました。
この本の中では、発達障害と思われる天才たちが紹介されていました。
ほとんど馴染みの人たちばかりです。
最初は、クイーンのフレディー・マーキュリーから始まり、有名人のオンパレードです。
第1章は、ADHDの紹介です。
ADHDは注意欠如多動性障害と呼ばれているもので、「不注意」と「多動・衝動性」を主要な症状とする発達障害だとこの本では述べています。
「不注意」の症状としては、「注意集中ができない」「注意の持続に問題がある」「外部からの刺激により注意がそらされる」などです。
具体例としては、野口英世、南方熊楠、モーツァルト、黒柳徹子、水木しげる等が取り上げられています。
多分、前述の学生を発達障害だと言った別の学生も、この本に述べられている発達障害のADHDに当たるということで、そういったものでしょう。
他の章では、ASDと呼ばれる自閉症スペクトラムや精神疾患のうつ病や統合失調症と天才の関係について触れています。
この本を読んできて、ただ感じたのは、読み物としては、面白くて、読みやすいのですが、本人も会っていなくて、直接診断もしていないのに、はっきりとこういう疾患だと言い切っていいものか、とも思いました。
書籍等の間接史料の情報しかないにも関わらずです。
著者は、発達障害の専門家で実際に臨床もしています。
そしがやは、発達障害についてはほとんど知らないので、著者のような専門家に対して、偉そうなことはいえないのですが、ちょっと断定しすぎのような気もしました。
とは言いつつも、天才たちの興味深いエピソードが多く、読みやすいので、発達障害の一般的な知識を得るには、いい本であることは間違いないでしょう。
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