イスラエルのIT産業の躍進の秘密に触れた本を読みました。
これまでイスラエルというと、「パレスチナ問題」といったような政治的な問題が多く取り上げられて来ました。
ですから、人によっては、イスラエルに対して、必ずしもいいイメージを持っていないかもしれません。
最近だとイエルサレムの首都問題が話題になっています。
ですが、一面では、IT産業の面で革新的な技術に積極的に投資を行っている国でもあります。
この本によるとパソコンのCPUがインテル製であれば、その8割以上はイスラエルで開発されたものだそうです。
スマホでグーグル検索をすると、文字をいくつか入力しただけで、候補がプルダウンのように表示される「グーグル・サジェスト」という機能のイスラエルで開発されたものです。
そのパソコンを外部侵入者から守ってくれる「ファイアーウォール」もイスラエルのベンチャー企業のものだといいます。
それにあの「ドローン」もイスラエルで生まれたものです。
この本は、人口は、わずか約800万人ほどの国ながら、そんな技術大国であるイスラエルの内面に迫った本です。
この本の著者は、元商社員でアメリカに二度の駐在経験があり、そのときのアメリカでの変化を述べています。
最初は、1988年から93年までです。そのときは、日本がアメリカにとって、経済的に脅威になっていたころです。
ですが、二度目の駐在の2008年から12年になると日本の存在は、見る影もなく、代わりに注目を集めていたのは、イスラエルだったと述べています。
そんなイスラエルの秘密を探ったものです。
その躍進の理由として、ロシアや東欧から高学歴移民を受け入れたことや、イスラエル軍が数理系の才能をもつ若者を選抜する超エリートプログラム「タルピオット」「8200部隊」の存在があると指摘しています。
イスラエルは、人口が少ないせいもあって、国民皆兵制の国です。
女性にも徴兵があります。
普通に考えると、徴兵制は、経済活動に取ってマイナスですが、イスラエルは、それをプラスに変えているようです。
その背景には、イスラエル社会の「失敗を恐れない精神」、ユダヤ人の伝統である「どんな権威にも遠慮せず、自由な議論を尽くす慣習」、そして世界各国からの移民がもたらす「パイオニア精神」があります。
全体を読んでいくとかなりイスラエルに好意的な記載が多いです。
最後にそんなイスラエルの弱点についても触れています。
「頭脳流失」やIT産業に特化した経済です。
全体的な本のバランスから言うと、もっとマイナス面についても触れてもいいように思いました。
ですが、躍進するイスラエル経済の現状からは、元気のない日本にとっても参考になる面があると感じました。
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