以前、見た林修のテレビ番組で、教育を経済学で分析する筆者を見て、興味を持ったので、この本を読みました。
教育というと自分自身や親としての体験に基づく教育論がテレビなどでは、主流で、教育とはおよそ関係がないと思われる経済学からの視点が面白かったのです。
この本の特徴は、科学的根拠に基づく分析です。
これはエビデンスと言いますが、この視点は、ずっとこの本に共通しています。
最近、自分が親として、有名大学に子供を入学させた母親の手記が売れていますが、これは、科学的裏付けがなく、たまたま有名大学に子供が合格しただけかもしれません。
万人がこの母親のように子供を育てれば、有名大学に入るというものでもないでしょう。
このような主観的な見方とは、この本は一線を画しています。
具体的に科学的根拠に基づく分析とはどういうものでしょうか。
この本で紹介されている一例を挙げてみます。
「子供を勉強させるために、ご褒美で釣ってはいけないの?」という相談がありました。
親としては、子供に勉強させるために褒美で釣るようなことは、言いがちです。
こんなことでしか子供に勉強をさせられなんて、自分は、親失格ではないかと悩む親も多いでしょう。
これに対しては、経済学的には正しいと結論づけています。
経済学では、教育収益率という考え方があり、今勉強すれば、将来の収入は高くなることは、統計的で証明されています。
これは誰しもわかっていることですが、子供はそれだけでは勉強しません。
人間は、遠い未来のことに関しては、冷静に判断できても、近い将来だとたとえ小さくてもすぐに得られる満足を大切にしてしまいがちです。
ですから目の前にご褒美をぶら下げられると、今、勉強していることの利益や満足が高まり、それを優先します。
ご褒美で釣るのは、その性質を利用して、今勉強させて、勉強を先送りさせないという戦略だというのです。
ご褒美で釣るというのは、何か道徳的には、しちゃいけないような気がしいますが、このように科学的根拠のある合理的な説明があると、納得します。
このような例がいくつかあります。
「テストでよい点を取ればご褒美」と「本を読んだらご褒美」とでは、どちらが効果的かとか。
「頭がいいね」と「よく頑張ったね」の場合は、どうかとかです。
いずれも意外な結果が結論として説明されていますが、いずれも科学的根拠が示されています。
この本を読んでくると、今までの日本の教育行政の間違っていた点が明らかになり、目から鱗が落ちます。
読みやすくて、教育に関して、今までにない視点からの問題提起をしているので、お勧めしたい本です。
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