中国共産党が日中戦争、国共内戦を経て、どうやって中国を支配できたかに興味を感じているので、その中心的な人物である毛沢東の行動を検証したこの本を面白く読んだ。
そしがやは、なぜ日本の降伏のあと、蒋介石の国民党ではなく、毛沢東の共産党が中国を支配できたかがよくわからなかった。
だが、この本を読んで、その理由がわかった気がした。
共産党は、日本軍と国民党とを戦わせ、自分たちの勢力を温存し、日本軍が撤退したあと、日本軍との戦いに疲弊した国民党を攻撃して、打ち破ったのだという。
また、共産党は、日本軍へ国民党の情報をスパイを通じて流していた。
毛沢東にとっては、主敵は日本軍ではなく、国民党だった。
そのためには、日本軍と共謀することもいとわなかった。
その辺の事実関係が、各種の資料によって明らかにされていて、説得力がある。
これを読んでいると、著者は、毛沢東は個人的には好きではないようであるが、彼は、たぐい稀な戦略家だと思える。
最終的に蒋介石の国民党が毛沢東の国民党に負けたのは、当然という気がする。
つまり毛沢東の方が戦略家としては一枚も二枚も上だったのだ。
だが、今一つよくわからないのは、仮に共産党が勢力を温存できたということがあっても、1945年の日本軍の降伏のあとの国共内戦を短期間で圧倒的に勝利できたかということだ。
国民党軍は、アメリカ軍の援助を受けていて、装備的には、共産党軍よりは恵まれていたはずだ。
著者は、国民党が日本の将兵や民間人の日本帰還にエネルギーを使い、疲弊してしまったことを理由の一つに挙げているが、それだけなのだろうか。
結果的に中華人民共和国成立は、1949年だから共産党は、日本の降伏後の4年という短期間で中国全土を手に収めたのである。
1945年以降の国共内戦について書かれたものは、あまり見かけたことはない。
この本によると著者も経験した1948年の長春攻防戦以降、戦況が一気に逆転して、共産党軍は中国全土を手中にしたとあった。
その辺のことを詳細に書いたものがあれば、読んでみたい。
関連記事