あるブログを読んでいたら、
世の中で一番さびしい事は、する仕事のない事です。
というフレーズがあって、どこかで読んだことがあったことを思い出しました。
子どものころの実家に貼ってあった福沢諭吉のものだ、としばらくしてわかりました。
「福澤心訓」というらしい。
ウィキペディアを見ると全部載っていたので、紹介してみます。
一、世の中で一番楽しく立派な事は、一生涯を貫く仕事を持つという事です。
一、世の中で一番みじめな事は、人間として教養のない事です。
一、世の中で一番さびしい事は、する仕事のない事です。
一、世の中で一番みにくい事は、他人の生活をうらやむ事です。
一、世の中で一番尊い事は、人の為に奉仕して決して恩にきせない事です。
一、世の中で一番美しい事は、全ての物に愛情を持つ事です。
一、世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です。
確か実家の食堂の壁にその印刷物が貼ってありました。
食事をするたびに見ていたことを思い出します。
そのころは、福沢諭吉の言葉だと書いてありましたが、あとで偽作だとわかりました。それは、清水義範の「福沢諭吉は謎だらけ」を大分後に読んでからです。
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子どもだったそしがやは、それを毎日、目にして、福沢諭吉はえらいなあと感じ、いい事を書いているなあ、と思っていました。
多分、父か母がどこからかもらってきて、貼ったものでしょうが、二人は、その「福沢心訓」のままに仕事を年老いてからも続けていました。
仕事を辞めたのは、父が75歳くらいでした。
福沢諭吉のものだと思われて、流通していたのは、いかにも福沢が言いそうな内容だったからでしょう。
父母は、福沢諭吉の言葉だとずっと信じていたのではないか。
今仕事をしていないそしがやは、この「福沢心訓」からすると一番さびしい状態ですが、ちっともそう思いません。
無論偽作だとわかったせいでもありません。
本当に福沢が言っても変わらないでしょう。
人生は、それぞれいろいろな選択があるからです。
一度しかない人生です。
仕事を続けるだけが人生ではありません。
無論続ける人を否定はしませんが。
むしろよくできたこの偽作を書いた人間を評価したいと感じています。
ですが、この偽書の唯一の失敗は、「福澤心訓」の教えに背く内容があることです。
その教えとは、
世の中で一番悲しい事は、うそをつく事です。
これは、福沢研究者の富田正文が『福澤諭吉全集』第20巻の附録の「福澤心訓七則は僞作である」と題した短文の中で書いています。