そしがやです。
大学の授業で毎週、違った教官が自分の専門を講義する授業があります。
先週は、文化人類学の先生でした。
自分の今までの研究テーマを時系列に話してくれました。
最近はアフリカがテーマになっているようで、最後にソマリア人の執事がシェークスピアの「ベニスの商人」を読んだときのエピソードを述べてくれたのが面白かったので、紹介してみます。
ソマリア人というのは、デンマーク出身のアイザック・ディネーセンの「アフリカの日々」という小説に出てくる執事です。
1914年から1930年までケニアで実際に暮らしたときのことがモデルになった小説です。
映画化され、「愛と哀しみの果て」の原作です。
ロバート・レッドフォードやメリル・ストリープが出演した作品なので、映画を見た方もいるでしょう。
その小説の中にソマリア人の執事がシェークスピアの「ベニスの商人」を読んだときのことが書かれています。
小説ですが、実際にあったエピソードだと思います。
「ベニスの商人」には、三人の主な人物が登場します。
ベニスの商人のアントニオ
ユダヤ人の金貸しのシャイロック
アントニオの友だちの恋人のポーシャ
ストーリーは、有名なものですが、紹介すると、
友人である、ポーシャの恋人のためにアントニオは、シャイロックから金を借りる。そのときの条件は、金を返せなければ、肉1ポンドを返せというもの。
だが、アントニオの船が難破して、全財産を失ってしまい、金を返せなくなってしまう。
裁判になり、判事になったポーシャが、肉1ポンドを返せと命じるが、そのときには、けして血を流してはいけない、という。
ここでめでたし、めでたしでストーリーは終わる。
普通の感想は、ユダヤ人の金貸しのシャイロックは、何と強欲なんだろう、ということでしょう。
それを機転の利く判事に扮したポーシャがやっつけるのが心地いいというものです。
ですが、「アフリカの日々」に出てくる、この世界的に有名な話を読んだソマリア人の執事は、ユダヤ人の金貸しのシャイロックが可哀想だと言うのです。
金を貸して、条件として肉1ポンドで返すということにアントニオも納得したのに、裁判官に扮したポーシャの悪知恵でだまされたようなものだというのです。
結局、この裁判で、シャイロックは、金を貸したのに、返してもらえなくなってしまいます。
そしがやは、その話を教官から聞いて、こんな見方があったのかと思いました。
一方的にシャイロックが悪かったと思っていたのですから。
それは、ユダヤ人に対する先入観があったのでしょう。
これは、ヨーロッパ人が持っていたもので、そしがやも映画や小説などによって、刷り込まれたものでしょうね。
教官がいいたかったのは、物事は、いろいろな視点で見ることが必要だということです。
みなが絶対的だと信じていることでさえ、別の見方があるということです。
その授業を受けてから、いま身の回りで起きていることを考えてみました。
新聞には、いろいろな記事が載っています。
テレビには、いろいろなニュースが流れています。
記事やニューズによっては、ある絶対的な見方が正しいというふうなものが多いような気がします。
本当にそうでしょうか。
他の見方はないでしょうか。
そしがやは、「ベニスの商人」を読んだ、ソマリア人のようにまっさらな心で見ていきたいと思いましたね。